2024年4月30日

№121 あなたは心地よい人ですか

 髪に白いものが混じってグレーになり、ピュアなブルーやオレンジ色が似合うようになりました(と思います)。
 通りがかりの小さな洋品店のウインドーに明るいグリーンのブラウスを見つけて支払いをしていると、若い女性が入ってきてガシャガシャとハンガーにかかった服を触り、棚の商品を何枚か広げて無言で出て行きました。私が驚いた顔をしたからでしょうか、お店の方は「あれが普通なんですよ」と苦笑い。
 そう言われてみると最近の大型店ではレジまでも自動で、一言も言葉を発せず買い物ができます。私も極度な人見知りなので(本当ですって!)このシステム決して嫌いではありません。
 ただし、商品はお金を払うまでは自分のものではなく、ましてやお店は他人の領域です。それなりの気遣いはしたいもの。商品を手荒く扱わず、お店のスタッフと目が合えば挨拶はしなくても表情くらいは和らげましょうよ。
 大好きな食べもの屋さんがあります。昔住んでいたパリの(うそ)下町のそのまた下町のような小さなレストラン。年配の男性が一人で切り盛りしています。つまり一人で買い物して料理もしサービスもお皿も洗うというお店。 少しきしむ戸を開けて、こちらに顔を向けた店主に「こんにちはー2人なのですが良い?」と。「お好きな席にどうぞ」と言われてから座ります。できれば予約をしたいのですが電話に出ないことが多いのです。なにせ一人なので。
 腰を下ろしながら「まずビール」なんて決して言ってはいけません。彼が小さなメモを片手にニコニコとオーダーを取りに来るまでひたすら待ちます。
 そういえば外国で座るなり手をヒラヒラさせて「まずビール」なんて光景を目にしたことがありません。待ちましょう。待つ時間のないときはファストフードを選びます。注文するときはあれやこれや聞いて良いのです。後でしまった!と思わないように慎重にメニューは決めます。常連になれば付け合わせのフライドポテトを違うものにしてねとか辛子多めにと頼むのもありです。もちろんありがとうは忘れずに。食事をお客が心から楽しむのが店主にとって、いちばんうれしいことだそうです。こういうお店に出会えるのは人生の幸せの一つです。
 楽しいこともつらいことも人との関係性の中から生まれます。それをどちらにするのかはあなたにかかっているのです。