2021年5月1日

NO.103「食卓の調味料」 県P新聞 令和3年5月号から

  私がついうっかり料理研究家になってしまったのは、母から強引に短大の栄養科に入れられたからです。もちろん今では大感謝なのですが…。授業中は、ボーッと空想しているか教科書以外の本を読んでいるかの落ちこぼれ学生。卒業時に頭に残っているものは皆無。今となっては高い授業料を払ってくれた親に対して謝ることもできません。

 先日「先生の料理は薄味でおいしいです」と生徒さん。言われてみて気がついたのですが、外で食事をするとほぼ味が濃すぎて。あとでのどが乾きます。

 母は料理上手でしたが煮物などは甘辛く濃い味だったように思います。するとですね…私の味覚は2年間の学生時代で培われたのかもしれません。そうであるならばボーッと過ごしたあの時間も決して無駄ではなかったということです。それどころか素材の味を感じさせる薄味が身について、私や家族の健康の礎を築いてくれたのでした。

 皆さんの作る料理の味付けはどうでしょう。もし濃いと思われたら「今からでも味覚は変えることができますよ」と言えるのは私の経験からです。

 簡単なことから始めましょう。インスタントラーメンなら、指示された分量より水を多く入れます。佃つくだに煮や塩辛などは子どもたちには刺激の強過ぎる食べ物だと思ってください。「うちの子は酒のつまみのようなものが好きで…」なんて自慢げに話す人がいるのには驚きますが…。

 餃子(ぎようざ)やしゅうまい。下味のついた焼肉にさらにタレをつける。それが当たり前になっていませんか。最近では減塩の行き過ぎが問題にもなっていると聞きますが。子どもたちには塩辛さを好む嗜好(し こう)を身につけさせたくはありません。

 よその食卓のことはよく分からないのですが…(誰も招いてくれないので)。

 昔はどこの家庭にもテーブルの上に調味料セットが置かれていましたが今はどうなのでしょう? 食卓にはちゃんと味付けされた料理が置かれているはずです。刺身や冷奴(ひややっこ)、納豆など食卓での味付けが必要な時にだけ調味料があれば良いのでは。必要もないのに何にでもソースをかける誰かさんのようになってしまいそう。何日も小さな容器に入れっぱなしのしょう油は風味が飛んでしまっています。慣れるとそれにも気付かなくなります。

 コロナの影響で家庭の中での食事がさらに大切になっています。皆さんの食卓が楽しく健やかであることを祈っています。