2022年7月13日

NO.110「お茶を楽しむ心の余裕を」 県P新聞 令和4年7月号から

お水を買って飲む?40代後半だった私には大きな謎でした。ペットボトルに入った水が売られていることは知っていましたが、それを買う人がいるなんて。「水と安全は無料」と言われる時代でした。

アパートの貯水タンクの水が汚染されているなどの報道もあり、災害時の飲料水としても普及していったのですが。1996年に小容量のペットボトルが売り出され、水を買って飲むことが日常になっていきました。

私の子供の頃といえば60年以上も前ですが(歳がバレますね)宅配はほとんど自転車でした。夏の贈答シーズンにはお兄さんやおじさんが汗びっしょりになって荷物を配達していました。

その頃、母はヤカンに冷えた麦茶を、大ぶりのコップに注ぎ、手渡していました。時々茶匙山盛りのお砂糖を入れて・・(甘い麦茶って美味しいのです)私の事務所で今ひどく暑い日は冷たい水やアイスコーヒーを準備するのは母からの影響なのです。

お客にはもちろん、ご近所さんが庭からきて縁側に座ってもまずお茶。のんびりした時代とはいえ、昔はお茶の出番の多かったこと。

泥棒が来てもまずお茶くらいは出しなさいよと真顔でブラックな冗談を言うお年寄りも居て。

先日夫がマンションの会合に出ると言うので、手作りのクッキーをもたせました。すると、お茶が出なかったから管理人さんにあげてきたと。何十年間も会議にお茶を飲む習慣がないとのことでした。ある意味合理的。書類を汚したり、こぼしてパソコンをダメにする危険性もありませんね。

しかしですね。2人以上の人が何時間も飲み物なしで会話するって想像がつかないのです。殺伐としていませんか。次の回から紙コップとアイスコーヒとクッキーをもたせました。それぞれがペットボトルで好きな飲み物を持ち歩ける時代に古臭いとは思いますが。PTAの集まりでも一杯のコーヒーと一粒のチョコレートやクッキーがあると穏やかで親密な話ができそうな気がします。飲み会など必要でなくなるかもしれません。

子どもさんとのお茶の時間を楽しんでいますか。喉が渇いたらそれぞれが冷蔵庫を開けてジュースやお水。わざわざお茶の時間なんてと思わないでください。たまに、たまにで良いのです。急須にお茶の葉を入れてきちんと入れたお茶でくつろぐ時間を持って欲しいです。(ほうじ茶ならカフェインが少ないので小さな子どもさんにも大丈夫)。袋菓子でなく季節の和菓子を準備して。高いお茶やお菓子でなくても優雅に時間が流れます。

その経験は子供にとって大きな財産になります。大人になってよそ様でお茶を出されて落ち着いてその時間を楽しめるはずです。

1枚のコインで好きな飲み物が買える便利な世の中だからこそ。きちんと入れたお茶の持つ価値は大きいのです。